毛嚢炎とは〜症状・原因・できやすい場所・対処方法について〜医師が解説
1.毛嚢炎とは
1-1.赤みをおびたできもの
毛嚢炎とは毛穴の中央部分に白や黄色の膿を含んだぷっくりと盛り上がりができ、赤みをおびたできもののことを言います。
炎症によって軽いかゆみや痛み、赤みがでることもあるため、悪化し症状がひどくなる前に医師の診察のもと適切な処置を受けることをおすすめいたします。
1-2.毛穴の奥で炎症が起こっている状態
毛穴の奥の毛根を包んでいる部分である「毛包」で炎症が起きている状態であり、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などを原因菌とする細菌感染症です。
通常皮膚の常在菌として互いにバランスを保ちながら、肌のバリア機能を支えていますが、ムダ毛処理や医療脱毛などの外部刺激や内的要因が原因となりバランスを崩すことがあります。
すると肌のバリア機能が低下し、毛穴の中で菌が繁殖し炎症を起こすことで毛嚢炎を引き起こします。
1-3.毛嚢炎とニキビの違い
ニキビかな?と思っていたら毛嚢炎だった、ということがあります。見た目だけでは判断は難しいかもしれませんが、ニキビと毛嚢炎は原因となる菌が異なります。
ニキビは毛嚢炎の一種ではありますが、ニキビの場合、原因菌はアクネ菌で毛穴に皮脂が詰まりアクネ菌が増殖することで発生します。
毛嚢炎は白ニキビのような見た目をしていることもあり、軽度であれば清潔な状態を保つことで自然治癒も期待できますが、悪化するとニキビのように赤く膿を持ったできものになります。
2.毛嚢炎の症状とできやすい場所
2-1.毛嚢炎の主な症状
毛穴の中央に膿を持ったふくらみができ、周囲の赤み、軽い痛みやかゆみを伴います。発症は複数、または一つだけポツっとできることもあります。
また症状が悪化し、硬いしこりのようになったものを「せつ」と呼び、赤みや痛みも強くはっきりとしたものになります。
さらに進行し悪化した状態のものを「よう」と呼び、より強い痛みや圧迫感、熱感を感じ、それだけでなく発熱や体調不良なども引き起こします。
2-2.毛嚢炎ができやすい場所
毛穴がある部分はどこも発症する可能性はありますが、顔や首のうしろ、背中、太ももや臀部(おしり)、Vライン含む陰部などは比較的よくみられる箇所です。
男性の場合、口、あご、頬などのひげ周りにも注意が必要な場所になります。ひげ周りに毛嚢炎が発症した場合、かさぶた状態の紅斑がいくつもできて隣り合った毛包が連なり、大きな面として形成される恐れがあります。
3.毛嚢炎の原因とは
・ムダ毛処理
毛嚢炎の原因となるものには外的要因、内的要因どちらも可能性として考えられますが、外部からの刺激としてムダ毛処理がまず挙げられるでしょう。
前述した通り、毛嚢炎は黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌が原因となります。
通常これらは皮膚のバリア機能を保つために常在する常在菌ですが、カミソリや除毛ワックスなど、皮膚表面に負担がかかり一時的に皮膚の免疫力が低下したところに菌が入りこみます。
ムダ毛処理をした際にできた微細な傷口から毛穴に入り込んだ菌が増殖し、炎症を引き起こします。
・医療脱毛
医療脱毛はレーザーによって毛包の発毛組織を破壊します。このときに皮膚のバリア機能も一時的に低下し、ここで雑菌が毛穴に侵入することで毛嚢炎を引き起こすことがあります。
また毛嚢炎は、脱毛施術後すぐに症状がでるとは限りません。数日から1~2週間後に出てくる可能性もあります。
・生活習慣の乱れ
内的要因からも毛嚢炎発症の可能性が考えられます。不規則な生活やストレス、睡眠不足、乱れた食生活は、肌のターンオーバーが正常に行われずバリア機能が低下する原因となります。
肌のターンオーバーとは通常約6週間で行われ、表皮の一番奥にある基底層から新しい皮膚細胞が作られ、それが上へと押し上げられ最終的に角層へとたどり着き、垢となり剥がれ落ちます。
このサイクルが乱れバリア機能が低下することで、毛嚢炎ができやすい条件を作りだしてしまいます。
4.毛嚢炎ができてしまったら・・・
4-1.触る・潰すはNG
毛嚢炎ができてしまっても、潰さないでください。過度に触れることも刺激になりますので控えましょう。
潰してしまうと悪化し治りが遅くなり、他の部位に広がることもあります。
4-2.皮膚を清潔に保てば1週間ほどで軽快
早く治す方法として大切なのは皮膚を清潔に保つことです。
清潔に保ち、患部を触らない、潰さないなど気を付けていれば一週間ほどで軽快し自然治癒も望めるでしょう。
4-3.悪化する場合は皮膚科を受診しましょう
潰してしまい痛みが強くなり悪化した、塗り薬などの市販薬を使用したがなかなか治らない、または繰り返す…などの症状がみられるのであれば、専門医に相談してください。
症状が悪化して膿ができている場合、切開するなどの処置が必要なケースもあるため、自己判断で対処するのではなく速やかに皮膚科を受診しましょう。
5.毛嚢炎の予防方法
5-1.皮膚を清潔に保つ
毛嚢炎はできてしまっても、皮膚を清潔に保つことで通常一週間ほどで治りますが、まずは毛嚢炎ができない環境作りをし、予防しましょう。
そのためには皮膚を清潔に保つことがやはり大切になります。汗や皮脂はシャワーや洗顔で清潔にするなどして菌の増殖を抑えるよう心掛けましょう。
5-2.保湿・紫外線対策を徹底する
乾燥や紫外線ダメージは肌のバリア機能低下につながるため、UVカット効果のあるクリームを使用するなどして紫外線ケアや保湿もしっかり行いましょう。
特に肌が乾燥した状態であると紫外線ダメージも受けやすくなります。朝と夜、できれば日中も、保湿はしっかりと行うことを意識するといいですね。
5-3.肌に触れる衣服や寝具も清潔にする
汗をかいたあとはすぐに衣服を着替える、寝具はシーツや枕カバーをこまめに取りかえるなどして、肌に直接触れるものは常に清潔に保つことも大切です。
5-4.自己処理の方法にも注意する
ムダ毛の自己処理は肌を傷つけやすい状態にあります。カミソリでの処理よりも電気シェーバーを選択する、電気シェーバーよりも医療脱毛でプロにお任せするなど、より肌に負担の少ない方法でケアをしていくことをおすすめいたします。
6.毛嚢炎が治らない場合は病院を受診しましょう
毛嚢炎は皮膚への刺激や負担によりバリア機能が低下することで発症し、特定のできやすい場所があるものの、毛穴がある部位であればどこにでもできる可能性があります。
悪化すると痛みや赤みを伴い、長期化してしまうこともあるため自己判断で対処しようとせずに、皮膚科など専門医に相談しましょう。
ムダ毛の自己処理など肌に負担がかかることで毛嚢炎ができやすくなるため、保湿を丁寧に行うことが大切です。また、クリニックで医療脱毛を行い、自己処理の必要がなくなることでも毛嚢炎などの皮膚トラブルを避けることができます。